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今日の痛い話

2010,2,1


ついさっき、上野の国立西洋美術館に行ってきた。 


大学から歩いて20分程度という距離は、授業をサボって行くには遠すぎることもなければ近すぎるということもない、まったく具合のよい距離である。 



ところが今回、芸術鑑賞を目的に足を運んだわけではない。 

「数枚の写真データを手元のSDカードに収める」というなんら大したことないミッションを遂行するのが今回目的である。 


そう、大したことのないハズだった………… 

何も難しくない。そう思っていた。 


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とある事情で美術学のレポートをやることになった。 


『美術作品について比較研究をせよ。字数は問わないが、版画を添付すること。』 

というのが宿題である。 



そこで今回は近代芸術における 

「写実主義」 

「印象派」 

これらを、それぞれの代表作を通じて比較研究することにしたのだ。 





「写実主義」の代表作家としてクールベ、「印象派」の代表作としてモネを選ぶことに。  


それは、以前国立西洋美術館に出向いた際、展示作品の中に2人の名前があったことを記憶していたからだ。 


添付する版画は直接撮影するほうがWikipediaでコピペするより印象は良いだろう。 


記憶が確かならば、上野の美術館はフラッシュを焚かないという条件のもとで写真撮影が可能だった。まさに、今回のような目的にはもってこいである。 




そんなわけで、ちょうど今日、上野は国立西洋美術館に行ってきた、というわけなのだ。 





春の訪れを予感させるようなうららかな陽気。 

そんな中を歩くのは実に気持ちが良い。あっという間に目的の場所についた。 



東大はキャンパスメンバーズとやらに加入しているらしく、美術館の入館が無料である。 


全く得はしていないが、どことなく気分が良い。 


そこで、調べはしてあったのだが、勢いついでに聞いてみた。 


「フラッシュ撮影しなければ写真撮っても大丈夫なんですよね」 


「はい大丈夫ですよ」 

と、学芸員。 


確かにそういったのである。 

そのとき完全に彼女を信用してしまった。 

それが、今回のアヤマチの全ての原因になるとは知らずに………… 





館内を進んでいくと、まず出くわすのは大量の宗教画である。 


イエスが磔にされている絵、シワ、ほくろ一つとしてない異様に美化された聖母マリア…… 

はっきり言って興味がわかない、つまらない絵画ばかりだ。 


世界史の授業をもう少し真面目に受けていれば、宗教史に関して理解があれば――もしかしたらその価値がわかったのかもしれない。 

しかしながら、シンは高校時代世界史のテストで見事10/100をマークした男。もちろん、そんなものの価値がわかるハズはないのである。 


見ても時間の無駄なのでさっさと目的の獲物を探すことに。 



しばらく進んでいくと先に見つかったのは「印象派」作家のモネの絵画である。 


全部で10点ほど展示してある。 
どことなく「印象」で書いたっぽいのを直感的に選び撮影をする。 




予定どおりに事が運んでいる。 


このまま「写実主義」クールベの作品もカメラにおさめてしまえば、今回のレポートは8割方出来たも同然。この調子でいけば、全てがうまくいく。 

そうなるハズだった。 


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階層を1つ下り進んでいく。 



あった。 

たしかにクールベの作品が展示されている。 

しかし、その作品の表題に書いてあったのは。 

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眠れる裸婦 

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なんて気持ちよさそうに寝てるんだ。 

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てか何で服を着ないで寝る? 

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パジャマってカタカナで書くでしょ? 
それは外来品だからカタカナなんでしょ? 
パジャマ、お宅の国にもありますわよね? 

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こっちの気もしれないで、堂々と寝る裸婦の変態さん。 

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こういう女が一番イヤラシイのだ。 

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お前など写真に収めてもやらなければ、比較研究だってしてやるまい。 




クールベの絵画はまだまだたくさんあるんだ。 

他のを選べば良いじゃないか。 








お! 

あるじゃないかあるじゃないか。 



そこにあったのは・・・・・ 


クールベ「裸婦」 






またかい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 




ええ加減にせいや! 

エロオヤジ、クールベ!! 





何が「写実主義」だ。 

ただの「変態主義」だろう。 




絵画を描くことにかこつけて実は女の裸を見たいだけなんだろう。 







ま、でもそうはいっても「写実主義」で有名な作家。 


まさか裸の女しか書かずに一生を終えたわけではあるまい。 



もちろん風景画だってあるだろう。 






探す。 



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ちーん 


確かにあった。 







それ以外に3枚あった。 

うち1つ裸婦。 




おい! 

裸婦率3/5かよ。 




60%裸婦。 

おまえは加藤鷹より変態だな、クールベおじさん。 











結局クールベの絵画は5枚しかなかった。 

しかも風景画は2枚。 




2枚・・・・・・・・ 


万が一のことを考えると残りの3枚も写真に収めておいた方がいいかもしれない。 






小一時間ほど悩む。 









脳内にイメージがあふれる。 


眠れる裸婦の情報を必死になってカメラにおさめようとしている自分自身のイメージが。 




こういう時に限って想像力が増す。 



学校が終わったらそのままバイトに向かおうと用意しておいたためシンはスーツ姿。 








見た目はシン紳士。 

だが行動はシン死。 






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実に痛い。本当に痛い。主観的にも客観的にも痛い。 

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いや、こんなことでたじろぐのはかえって恥ずかしい。 



これはあくまで学術研究のための資料調達のために出た行動であって、一切浮ついた気持ちをもたない純粋無垢な・・・・・ 

もう諦めた。言い訳をするのはよそう。 


全く持って自然なのである。 






ここは美術館だ。 

クールベの写真をみるや、ただちに写真を撮るという行動に移った一人の青年がいても。 

スーツ姿で裸婦の写真を撮る青年がいても。 

彼らはみんな、どこにでもいる、ただ美術に情趣のある青年にしか映らないのだ。 






意を決す。 


いざいかむ。 



男勝負に出る。 


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(といいつつ犯行の時間を出来る限り小さくするために一端退散し、露光時間、ホワイトバランス、倍率などの設定を調整してからことに臨む) 
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そして、瞬間はやってきた。 

被写体と対峙し、シャッターボタンをおす時が!!!!!!!!! 







よし、フレームを捉えた。 

後はシャッターを下ろすのみ!!!!!!!!!!!!!! 




心臓の鼓動が高なる。 




と、その時。 

学芸員(女性。しかも若いおそらく27くらいか)「すいません・・・・」 





シンの心の中 

「 

うひょ・・・ 

ふぁdsふぁsdごうしふぁういsふぁfjsjfじゃいdさd。 

あう。取りあえず死にたい。 

いや、てかあれだよ? 

別に興味ないからね。 

これは美術学という授業のレポートで必要だから撮ってるんでして。 

純粋に学術研究という崇高なる目的のために使用するだけであって 

それ以外の目的には決して使うことはないし 

てか、レポートが終わったらデータ消しても良いくらいだし 

ほんとやましいことなんかないし 

男はみんなエロいっていうんでしょ? 

いや確かにそれは真理かもしれないけどさ 

こんなのに興味ないし・・ 

てか裸婦だよ?この変態尼、絶対眠ってないから 

見られてるの、絵として描かれてるのわかってるから 

そんな女興味ないから 

ほんと許して。 



てかもう! 

なに、この虚しさ。 

1秒が長い。 

なんて言い訳をしよう。 


ふぁsだfじアfjsdjさdじょいあfjsdjふぃおあds 


泣 


」 



学芸員「その絵は撮影禁止なんですが・・・・」 

シン「あっスイマセン。」 


その後、逃げるようにに立ち去ったのは言うまでもない。 




去り際に確認したことによれば確かに 

カメラ禁止のマークが小さく掲げてあった。 



気づくわけねーし!!! 


あんな小さいの。 


てか入口の受付嬢め!!!!!! 


そんなこと、一言も言ってなかったではないか! 








完全に術中にはまったシンは以後、裸婦像だけはそして、クールベだけは、あまりお近づきにならないようにしよう。 


そう誓ったのでした。 


おしまい





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